
N・・・Ned Goodwin氏
W・・・wine-navi インタビュアー 石井
【第2話】
W:ネッドさんは、WSET(ダブリュセットWine & Spirits Education Trust)はとられているんですか?
N:いいえ、私はやっていません。イギリスや日本で、マスターオブワインを受ける場合、WSETから始める事が多いと思いますが、別に規則があるわけではありません。
僕は、主にアメリカでソムリエの仕事をしていて、アメリカでは、ほとんどWSETの影響力がないんです。
マスターオブワインを受けると決めて、申込みをした時に、『WSETは受けられましたか?』とは聞かれました。そこで、アメリカで主にソムリエとして働いていた事や自分にWSETを受けた人と同等の知識がある事を説明し、コースに入る事が出来ました。
W:試験は、ロンドンで行われるんですか?
N:いいえ、僕はシドニーで受けました。組織の本部はロンドンにありますが、試験は、ロンドン、シドニー、ナパで行われます。アジアに住んでいるならシドニーが一番近いですし、時差もそんなにないので、いいんじゃないかと思います。
それから、毎年変わるんですが、1月か2月に必修の5日間のセミナーがあります。
それはシドニーではなくメルボルン、ボルドー、ナパの3か所で行われます。
ここでは、実際の試験と同じフォーマットでテイスティングの問題を解いていきます。世界中からマスターオブワインが集まっているので、いろいろな質問も出来るので大変役に立ちました。緊張感がある中で試験の練習する事ができるのがいいですね。
W:それを受けてから試験があるんですか?
N:まずは申込みをして、それが受理されると、2年間の必修の勉強があります。その間かその後にセミナーを受けて、ともに終えると、試験に受ける時期を自分で決める事が出来ます。だから、もう少し準備をしてからとか、自信がついてからと言って先延ばしにする人が多いすね。ただ、僕の場合はなるべく早く受けた方がいいと思ったんですよ。日程を決めて、自分に期限を設けないと先延ばしにしてしまうんじゃないかと。子供も生まれたこともあり、一番、最初のチャンスに受ける事にしました。自分でやると決めてからは必死で勉強しました。
まずは戦術的に、理論に集中する事にしましました。なぜかと言うと理論もテイスティングもいっぺんに受かる人はほとんどいないんです。理論の勉強の方が、自分に興味のない部分も覚えなきゃならないですし、大変だと思ったので先に理論からやる事にしました。
それに最初は、テイスティングには、偉そうですが、すぐに受かると思っていたんですよ。でも、それは大間違いでした(笑)。ワインの知識がどれだけあっても、ワインの区別がどれだけ出来ても、、もちろん区別出来るのは大事ですし、それが出来なかったら失敗です(笑)。それよりも、時間の使い方、いかに効率的に使うかが重要になってきます。完成できなければ失敗です。先ほども言いましたが、A4の用紙に15枚くらい、たくさんの事を書かなきゃならないですから。
僕はラッキーな事に、一回成功した人の答えを見る事が出来ました。それをコピーして、言葉の使い方、省略の仕方を見て、時間の使い方を勉強しました。
それから、過去10年の試験を全部やりました。毎日、時間の使い方を意識しながら説いていると時計を見なくても時間配分が出来るようになりました。変な話ですが手の筋肉もついてくるしね(笑)。知識がないと、もちろん駄目ですが、僕にとっては時間の使い方が一番大事でしたね。
W:理論もテイスティングも受かって、後は論文ですね。そのテーマでもある日本のソムリエについて聞かせていただけますか?
N:日本でソムリエの仕事をしていて、そんなに情熱のない人と言いますか、そもそも興味のない人が多い事に気付きました。興味がないのにソムリエの資格をとったのはなぜ?と思うんですが、日本の資格社会と言いますか、資格を持っていると尊敬されるからなんでしょうね。
W:日本が世界で一番ソムリエの有資格者が多いんですよね?
N:いや、確かイタリアが一番目で日本は2番目。おかしいよね(笑)、、
W:私も百貨店で働いていたころ、お客様から『君は資格を持っているの?』とよく聞かれました。それだけソムリエの資格が日本では浸透していますね。
N:論文を書くのにソムリエの資格を持っている方、30人にインタビューしました。
その中で印象に残っているのが、ある場所で5人のソムリエにインタビューをした時のことです。彼らと話をしていても、誰からもワインに対する情熱は感じられませんでした。その時に『どれくらいワインを飲まれますか?』と聞いたところ、一週間に1本か2本という答えが全員から返ってきました。
W:なるほど、、
N:別に飲兵衛になれとは言いませんが、ソムリエなら、もう少し飲んだ方がいいんじゃないの?と思いますよね。資格を取った時点で終わりという考え方があるようで、きっと履歴書のためなんでしょうね。まあ、同じようにそれでお客さんが満足すればいいという部分もあるのだけれど、ソムリエには、もっとワインを好きになって欲しいし、もっと情熱をもって、ワインを薦めて欲しいですね。
それと日本にはワインの説明はあまり出来なくても、知識がすごくあるふりをするソムリエが多いですね(笑)。例えば、ボルドーのワインでカべルネは何%、プティヴェルトは何%とかいう言い方がよくあるじゃないですか?でも僕は、だから何?って思うんですよ。出来あがったワインの味わいを説明できないのに、細かいポイントだけ分かっていることが多い。
W:日本人の性格というか、お客様もそういう細かい質問をよくしますからね。
N:もちろんそういう細かい知識があってもいいんですが、それだけの知識があるにもかかわらず、ワインの味わいを説明できないのがおかしいですね。
W:熱意のあるソムリエさんは、誰かいませんでしたか(笑)?
N:そうですね、丸山さんがやっている、ヴァンピックルの若いソムリエさんが、良かったです。全体的に丸山さんの所は、良いスタッフが多いと思います。彼は、若いソムリエを雇うのが上手だし、ちゃんとフランスに行かせてあげたりしますしね。それはすごくいい事だと思います。ただ全部、有機の畑だけどね(笑)。
まあ、30人しかインタビューしていないので、他にもっと情熱のあるソムリエは、沢山いると思いますよ。ただ、割合を考えると情熱のあるソムリエが、まだまだ少ないと思います。
次回は、藤巻さんをまじえて、日本と世界の違い、ネッドのお勧めワインなどについて伺っていきます。
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Ned Goodwin(ネッド・グッドウィン)氏
1969年4月にロンドンで生まれる。
オーストラリアで育ち、高校生の時には交換留学生として一年間日本で過ごす経験を持つ。
パリのオーストラリア大使館ではコンサルタントとして、ニューヨークでは多数のレストランで支配人やワインバイヤーとして従事。また2000-2002年にかけて、世界一優れたワインリストをもつマンハッタンのレストラン、Veritasのソムリエとなる。
現在、レストラングループ、グローバルダイニング㈱のワインディレクター、バイヤーとして勤務。またワイナート,ヴィノテーク、The Japan Times 、New York Timesを始め、執筆活動も行っている。
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【インタビュアー】 石井邦生(いしい・くにお)
叔父の酒屋を手伝ううちにワインに惹かれ、いつしか本気になってワインアドバイザーの資格を取得。調子に乗り、さらにワインショップやレストランで経験を積む。
このころにはワインの魅力にずっぽりはまり、この道で生きていくぞと決意。東急百貨店町田店ワイン売り場の専属スタッフを経てフリーになり、都内の百貨店にて販売に携わる。2006年には渋谷にワインバー『 Cabotte 』をオープン。 |
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