
N・・・Ned Goodwin氏
W・・・wine-navi インタビュアー 石井
【第1話】
W:まず、日本に来たきっかけをお聞かせ下さい。
N:僕がロスでソムリエとして働いていたころ、グローバル・ダイニングの社長、長谷川さんと出会いました。高校時代に、日本で交換留学もしていたし、日本語がある程度は喋れたので、長谷川さんが『もし日本に来る気があるのならうちで働かないか?』と言ってくれたんです。でも僕はその後しばらくしてニューヨークのヴェリタスというレストランに移ってしまい、長谷川さんのリクエストを忘れてしまったんです(笑)。まあ、ヴェリタスの仕事が楽しかったのもありますし、その時はまだそれほど日本に行きたくもなかったこともあります。
W:では、それがなぜ日本に来る事になったのですか?
N:7年間付き合っていてガールフレンドと別れてしまったのと腕を折ってしまったのを機にニューヨークから離れたいと思いました。怪我もしていて何もできなかった事もあり、友人とラングドックで半年間、家を借りて色々考えました。ニューヨークに戻る直前に9.11の事件もあり、ニューヨークの雰囲気が一変したことも関係があると思います。そして、長谷川さんの話を思いだし、直接電話をしたらまだ仕事はあると思うと言われたので日本に行くことに決めました。2001年の11月に日本に来たので、今年の11月で丸8年になります。
W:グローバルさんでは、どのような仕事をなさっているんですか?
N:グローバルの言葉では、コーポレートソムリエということになっています。でも僕はワイン愛好家で、ワインを愛しているので、コーポレートという言葉とワインという言葉の相性が良くないと思っています。ようは英語でいうところのワインディレクターですね。一番重要な仕事としては、スタッフにワインを教えることだと思います。あともちろんワインリストを作ったり、在庫を管理したりする仕事もしています。
W:グローバルさん全体を見ているんですか?
N:石井さんもご存じだと思いますが、ワインにそんなに関係ないお店と言いますか、関係ないわけではないですが、ワインの知識がそれほどないスタッフでも売れるワインを揃えているお店もあります。ただモンスーンカフェでも、僕が入る前は、スーパーマーケットっぽいカリフォルニアワインの赤、白、一種類ずつしかなかったのを、ワイン愛好家も飲みたくなるようなリースリングとかグリューナー・フェルトリーナーなどの東南アジア料理に合うワインを紹介しました。
W:今日はレガートさんでワインの勉強会があったようですが、、
N:そうですね。レガートのワインリストは本当にいいですよ。別にグローバルを宣伝しているわけではなく、僕が飲みたいワインもいっぱいありますし、ワイン好きの友達もみんな良いと言ってくれています。ただ、やっぱりスタッフに、ワインの知識と情熱がないと売る事が出来ないので、教えるという事が、すごく大事になってきます。
それと権八のワインリストも最近なかなか良くなってきています。
権八は、寿司のお店と炭焼きのお店があり、寿司のワインリストがいいんですね。ドイツのリースリングとかグリューナー・フェルトリナー、オーストラリアの良いリースリングもいっぱいありますし、ピノ・ノワールの選択もなかなか良いと思います。でも保存する場所が全く同じなのに、このワインリストを炭焼きの方では、配ってくれないんですよ。寿司は寿司、炭焼きは炭焼きという凝り固まった考えがあるみたいですね。ワインの知識がそんなにない社員しかいなくても、このリストを配るだけで自動的に売上が上がるのに、なぜか配ってくれないんです(笑)。
多分お客様、特に外国人のお客様にワインの事を聞かれるのが怖いからなんでしょうね。
W:ネッドさんは、マスターオブワインに挑戦しているんですよね?
N:はい、6年前から始めて、2つの試験はすでに成功しました。理論の方は3年前、テイスティングは去年成功しました。
W:試験について簡単に説明していただけますか?
N:試験はテイスティングと理論とがあります。まず理論は4つのパートに分かれていて、一つ目はヴィティカルチャー、つまり畑についてですね。2つ目はヴィニフィケイション、酵母の使い方などワインの中について。3つ目はビジネス・マーケティング、例えば『イギリスは不景気ですが、どんなワインのブランドを作ったらいいでしょうか?』といった質問です。4つ目は、コンテンポラリー・イシュー、例えば温暖化の問題や水不足などの話ですね。
これらの各テーマに3つの問題があり、それを4日連続して行います。まずヴィティカルチャー、次の日にヴィニフィケイション、次の日にビジネス・マーケティング、次の日にコンテポラリー・イシューといったように進み、それぞれの問題を一時間でやります。そして同じ日にテイスティングもあります。一日目に、白ワインを12種類、2時間45分かけてやり、2日目に同じように赤ワインを、3日目には赤、白、ロゼ、酒精強化ワインなどを混ぜて行います。
よくテイスティングは、何のワインかを当てればいいと思っている方も多いようですが、それぞれのワインの産地、品種、造り方、樽のタイプや使い方、どんなレストランで合うかなどとA4の用紙に15枚くらい書かなきゃならないんです。
W:理論、テイスティングの後は何があるんですか?
N:今、論文を書いているところです。テーマは、日本で資格を持っているソムリエの研究です。それを6月30日にまで出して、それが通れば、9月には結果が出て、11月に正式にマスターオブワインになる事が出来ます。
W:楽しみですね。日本在住の方では、初めてですからね。
N:そうですね。でも、日本のワインマーケットのためには、日本人が必要だと思いますよ、マーケットを元気にさせるにはね。
次回は、試験の勉強方法について伺っていきます。
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Ned Goodwin(ネッド・グッドウィン)氏
1969年4月にロンドンで生まれる。
オーストラリアで育ち、高校生の時には交換留学生として一年間日本で過ごす経験を持つ。
パリのオーストラリア大使館ではコンサルタントとして、ニューヨークでは多数のレストランで支配人やワインバイヤーとして従事。また2000-2002年にかけて、世界一優れたワインリストをもつマンハッタンのレストラン、Veritasのソムリエとなる。
現在、レストラングループ、グローバルダイニング㈱のワインディレクター、バイヤーとして勤務。またワイナート,ヴィノテーク、The Japan Times 、New York Timesを始め、執筆活動も行っている。
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【インタビュアー】 石井邦生(いしい・くにお)
叔父の酒屋を手伝ううちにワインに惹かれ、いつしか本気になってワインアドバイザーの資格を取得。調子に乗り、さらにワインショップやレストランで経験を積む。
このころにはワインの魅力にずっぽりはまり、この道で生きていくぞと決意。東急百貨店町田店ワイン売り場の専属スタッフを経てフリーになり、都内の百貨店にて販売に携わる。2006年には渋谷にワインバー『 Cabotte 』をオープン。 |
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