
F・・・藤巻 暁氏
W・・・wine-navi インタビュアー 石井
【第2話】
W:ブルゴーニュで、ドニ・モルテ以外に誰か良かった方はいらっしゃいましたか?
F:ギスレーヌ・バルトはとてもよかったです。
あと、アルマン・ルソーは行く前から非常に楽しみにしておりましたが、やはり行ってよかったです。
まずは、ギスレーヌ・バルトのお話をさせていただきます。
特徴は、シャンボール・ミュジニのワインしか造っておらず、更に特級畑も造っていないという造り手で、女性当主が造る品の良いワインというのがわかり易いです。今回訪れた生産者の中で、最もカーヴが清潔なところでした。私は以前からこの生産者のワインが「何故こんなにもクリアで、けがれがないのだろう?」って感じていたのですが、セラーを見てみて納得、なるほど、こういった部分から醸し出されているのではないかという印象をより強く感じました。それほど知名度がないのは、特級畑やレザムルーズを造っていないからとだと思いますが、品質は極めて高く、1本を通して飲んでも飽きがこない、毎年飲み続けてゆきたいと感じさせてくれるワインだと思います。また、多くの方に紹介し、飲んでいただきたい最右翼って感じです。また、ギスレーヌ女史はとても物腰のソフトな方で、そんな人柄が味わいにもにじみでている感じがしました。バルトで私が一番好きなワインは熟したニュアンスの強い1級のレ・ボードです。これは本当に自分の好みに合うワインで、毎年リリースを楽しみにしている銘柄なのですが、それだけでなく、村名を含むその他のワインたちにもとても好感を持っています。これからも長く飲み続けてゆきたいワインであると再確認しました。これをご覧の皆様の中でも、まだお飲みでない方は是非一度ご体験いただきたいと思います。あんまり宣伝すると、自分が買う分がなくなっちゃうかな?笑
W:つぎはルソーですね?
F:はい、アルマン・ルソーは個人的に好きで、十数年来毎年欠かすことなく買っているドメーヌでした。空前の大ヒットと言われている2005年の赤ワインの中で、辛口で知られる評論家の方々ですら「2005年のアルマン・ルソーは優れている」と言うくらい、注目されていたので、期待が大きかったですね。
この程、東急本店で売り出した2005年のルソーは、シャンベルタンでも2万円代の価格で販売させていただき、それは市場価格で非常にリーズナブルな価格とされていたこともあり、ものすごい反響をいただきました。というのも、価格に敏感な方であれば、リリース価格で買えなかった場合、セカンダリーマーケットの価格が10万から20万円くらいついていることをご存知だからです。信じられないですよね~。これは。
そんなのが現状で、自分の知り合いは「12万で買った」といって自慢していたくらいですから。それくらい出しても買いたい人がいるというくらい注目されているんです。
話しはそれますが、同業の友人が「東急の価格と同じ値段で売っているものと思って問合せてくるお客さんが多くて困る」と言っていました。自分のところで扱っている価格を伝えると、「東急では安かったのに、何倍もしている」と言われたりするのだそうです。
確かにあまりにも市場価格と我々が扱っている価格に差がでてくると、様々な問題が生じますから、困ってしまいます。そうはいっても、当方では、人気があるからといって、ワインの価格を市場にあわせたり、人気商品とそうでない商品を抱き合わせてセット販売したりせず、いつも同様の掛け率でお出ししているので、一部の商品にばかり問い合わせが集中し、それしか売れないということもあります。我々はインポーターさんからセットで購入している場合も多いので、それ以外のワインが残ってしまうケースはありえますから、そう考えると、こういうやり方も多少見直した方がいいんでしょうかね~。
私たちとしては、その生産者が好きになったら、良い年は勿論ですが、小さい年でも同様に飲んで楽しんでいただきたいです。また、その生産者のフラッグシップにばかり人気が集中しがちですが、村名ワインやACブルゴーニュなどにも目を向け、色々と楽しんでいただければ、更なる楽しみの広がりがでると思うのですが・・・そういう飲み方を提唱し、普及させるのも、我々の仕事なんですけどね。
W:市場の価格と、東急さんの価格があまりにもかけ離れてしまうのは、色々物議をかもしますよね。
F:その話は、後ほど詳しく話すとしてルソーに話をもどしますね。
ロンドンに住む友達がいまして、その彼もかなり早い段階から2005年のルソーを絶賛していました。ロンドンに、ブルゴーニュワインで、ボルドーのプリムール的な事をやっているワインショップがあって、そこはリリースする前のワインを樽から詰めたものを持って帰ってきて、常連さんに飲んでもらうテイスティング会をやっているそうで、その会に参加した彼が、ブルゴーニュの名だたる生産者のワインが並ぶ中、アルマン・ルソーのシャンベルタンが断トツで良かったと絶賛していました。
クラスマンでも、評価を上げたことも加わり、とても楽しみにしていました。
W:実際行かれてどうでしたか?
F:自分の中では、ここ最近の味わいがちょっと厚化粧になった気がしていました。昔はリリースしたてを飲んでもそんな事は感じなかったように思います。自分の経験不足かもしれませんし、味覚が変わってきたのかも知れませんので、単に勘違いの可能性もあるので断定しませんが、その辺の話を質問してみたところ、答えは案の定「特に造りをかえてはいない」と言っていました。生産者にそういう事を質問しても、あまり思い通りの答えは返ってこないものでして、予想していた答えではありました。それはそれとして、生の声、生の意見という意味で良い答えが聞けたと思っています。
あと一昨年前から働き始めたフレデリックというセラー・マスターにバレル・テイスティング時に話を聞きましたが、彼は「ルソーってブルゴーニュの基本だよね」と言っていました。私も実は同意見!!
2006年のバレル・テイスティングはクロ・サン・ジャック→シャンベルタン→クロ・ド・ベーズの順でした。通常は最後がシャンベルタンで〆るらしいのですが、何故順番を逆にしたのかと訪ねたら「2006年は収穫の前に雹がふり、クロ・ド・ベーズの畑がダメージを受けたため、選果を入念に行なったことから、逆に果実が凝縮した。だから2006年に限って、最も強いクロ・ド・ベーズを最後にテイスティングしてもらった」と言っていました。
この程、東急本店の有料テイスティングでも、2005年のアルマン・ルソーのシャンベルタンを出させていただきましたが、味は別格!!であったと同時に、凄い!!と感じさせてくれる何かがありました。あれは買わないとね。
アルマン・ルソーの2005年を各アイテム複数本ずつテイスティングしましたが、シャンベルタンだけがいいわけじゃなく、他のワインも村名まで満遍なく美味しいと感じました。
本領を発揮してないグラン・クリュを今飲むのは、勿論もったいないのですが、シャンベルタンをすぐに飲んでも、果実が爆発している感じが楽しめ、サーヴィスの温度やタイミングさえ良ければ、硬さなく、わかり易い香りが強く、とても美味しく楽しめるでしょう。
すぐに飲むには村名の方が美味しいとか、グラン・クリュは後々飲むのがいいとか言いますけど、実際にはそんな単純なことではないと思います。それぞれにワインの個性やバイオリズム、ボトル差みたいなものがあるでしょうから。
W:いいワインを飲むと早い段階でも美味しいですよね。
F:はい、テイスティング・コメントを表現し口にするのも滑稽なくらい。笑
何かの香りがするとか、無理に言葉にするほどに当てはまらない気がしますね。
口では言い表せられないですよ!そういう飲み物って。でも、口で表現して人にわかるように伝えるのが私の仕事ですけどね。
あとシャンベルタンを所有している他の生産者に、ルソーのシャンベルタンをどう思うか?と聞いたら、『ルソーは、同じシャンベルタンでも色々な所に畑を持っているから、複雑で良いワインになるんだ!』と言ってる人がいました。
何ヶ所も持っていることによって単調にならず、より深く微妙で複雑な風味が醸し出せるんじゃないかと思います。
W:今回は2006年を中心に試飲したんですか?
F:そうですね。2006年はボトルと樽から、2007年も樽から試飲しました。2007年はまだマロラクティック醗酵中前後のものも多く、リダクション気味のものも多かったので分かりづらかったのですが、2006年で、私の受けた印象はかなりいいものでした。
2006年は、2005年の次の年ですし、影に隠れてしまいがちです。優良年がそんなに連続するはずないとも思われがちですが、2006年も赤白ともに素晴らしい年だと思います。特に白ワインは非の打ち所がない出来で、赤ワインは生産者を選べば最高というイメージらしいです。私が訪れた生産者は優良なところばかりだったせいか、劣悪なものを探すことはできませんでした。
売り口上かもしれませんが、ある生産者は2005年よりもいいと言っていましたが、多くの生産者は『2005年よりいい!!早く飲むならね』と言う条件つきでしたね。
近年のヴィンテージ個性でいえば、2002年は苦労することなく収穫できた、いわゆる優良年だった割には、すぐに飲んで美味しかった年で、中期的に熟成すると言われているようです。2005年は一世紀に何度かしかない優良年で、2002年と違って長期的に熟成する年なんだとか。時間がかかるということなんでしょう。明らかに濃いです。
2002年は、2005年ほどphが低くなかったらしく、2003年のような甘味が目立ちすぎることもなく、2004年のように茎っぽさや青っぽさ、ミネラル分や樽からくる風味が強く感じられすぎるようなものは、それほどないと思いますので、そのことから早くから楽しめる優良年と思いました。
とりあえず2006年が美味しくて良かったですよ、ホント。
でも自分と同様に2006年を色々テイスティングし、良いと知った人の中には『2006年が良いことを言いふらさないでくれ!自分が買えなくなっちゃうから』って言う人もいましたね。笑
そう言えばジョルジュ・ルーミエにも行きました。
2007年は樽からミュジニィまで一通り飲ませていただきましたが、自身で「2006年のレザムルーズはあまり美味しくないので、2005年のレザムルーズを飲もう」と言って、その場でボトルを抜栓し飲ませて下さいました。テイスティングとはいっても、吐き出したりはしませんでした。もったいないからね!!笑
第3話では、かなりユニークな藤巻さん的生き方について熱く語っていただきます。
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藤巻 暁(ふじまき・あきら)氏
1966年生まれ。
日本ソムリエ認定 シニア・ソムリエ WSET(r) アドヴァンスト・サーティフィケイト ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。
美術大学在学中に美術の勉強で渡仏しワインと出会う。以降、1989年アカデミー・デュ・ヴァンの門をたたき、複数のワインバー、レストラン、ワインショップにおいてワインのサーヴィス・セレクトに従事した後、ワイン・オークションサイトを主宰。
現在、日本有数の品揃えを誇るワインショップ東急百貨店本店和洋酒売場THE WINEにて就業しながら、雑誌・メディアにおける執筆、酒販店のコンサルティング・講演等、ワインの普及販売に携わっている。
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【インタビュアー】 石井邦生(いしい・くにお)
叔父の酒屋を手伝ううちにワインに惹かれ、いつしか本気になってワインアドバイザーの資格を取得。調子に乗り、さらにワインショップやレストランで経験を積む。
このころにはワインの魅力にずっぽりはまり、この道で生きていくぞと決意。東急百貨店町田店ワイン売り場の専属スタッフを経てフリーになり、都内の百貨店にて販売に携わる。2006年には渋谷にワインバー『 Cabotte 』をオープン。 |
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