
N・・・Ned Goodwin氏
F・・・藤巻 暁氏
W・・・wine-navi インタビュアー 石井
【第3話】

W:ここからは、ネッドをご紹介していただいた東急本店の藤巻さんを交えて話を伺っていきたいと思います。藤巻さん、宜しくお願いします。
F:宜しくお願いします。
W:ワインナビをご覧になっている方は、ブルゴーニュ好きな方が多いのですが、ブルゴーニュの生産者でお好きな方は、いらっしゃいますか?
N:僕は、果実味が爆発したようなワインは好きではないです。エネルギーがすごくあって、骨組みがしっかりした、熟成する余裕のあるワインが好きです。産地で言えば、シャンボール・ミュジニーが好きで、例えばギスレーヌ・バルトーやフレデリック・ミュニエが好きですね。まあ、もちろんヴォギュエも好きですが、あんまり買えないですからね(笑)。
ルーミエも感謝はしていますが、大ファンではないです。もちろん美味しいですよ、飲ませくれるなら『飲まないよ!』なんて偉そうに言わないです(笑)。だけど、もっと厳しいワインが好きです。辛抱してあげないといけないワイン。ピノ・ノワールの軽さが好きと言いますか、明らかな力はなくてもいいと思います。バルトーやミュニエみたいな、生き生きとしていて、骨組みのあるワインを飲むと、最初は薄く感じても、いつか豊富になるのでは?と思うと、だいたいそういう風になります。そういう意味でいくと、モンティーユのワインも好きです。エティエンヌもいいけど、お父さんの方が特に好きですね。ナーバスと言うか、緊張した触感があります。伝統的な造り手としては、アルベール・モローも好きです。
あとポンソも、好きですね。彼は、変わっていて、95と96のようないいヴィンテージは、上手じゃないのに、92のような、あまり良くないヴィンテージにすごくいいワインを造るんですよ。
対照的に、尊敬は出来ますが、ジョゼフ・ロティーのような生産者は、個人的にそんなに好きではないですね。
W:白ワインの造り手では、どなたかいますか?
N:シャブリのラヴノーが好きですね。もちろん、ドーヴィサも好きですが、ラヴノーの方が好きです。でも、最近ブルゴーニュの白は、そんなに飲まなくなりました。

F:ブルゴーニュの話もいいけど、ネッドは、世界中のワインに詳しいから、その辺の話を聞きませんか?例えばカーリー・フラットなどのオーストラリアワインの話とかね。
N: オーストラリアには、いいワインがたくさんあるのに、日本ではあまり紹介されてなく、あったとしても応援されていないと感じていました。でも、オーストラリアのワインに力を入れようと思ったきっかけはある日本的な質問からでした。
日本にいると、『あなたはどこの出身ですか?』とよく聞かれました。僕は、イギリス生まれで、オーストラリア育ちなんですが、アメリカでも何年か働いていて、フランスにもいたわけですから、どこで生まれとか、どこで育ったとかは、関係ないと思っていました。でも日本に良いオーストラリアのワインがないんだったら、オーストラリア人として(笑)、プッシュしていこうと思ったんです。いいワインがたくさんあるのに、輸入もされていないし、尊敬もされていない状態を変えていきたいと思ったんです。
例えば、カーリー・フラットやホッフキルシュやピズィーニなどの素晴らしい生産者を紹介しました。
F:ネッドは、面白いワインをいろいろ紹介してくれていますね。こういったワインが今まで日本にあまり入って来なかったのは、日本で常識になっている事と、グローバル・スタンダードが、違うからだと思うんですが、、
N:オーストラリアに行っても、ワインリストにバロッサなどのパワフルなワインは、そんなに載ってないです。もちろん、南オーストラリアに行けば、そういうワインが多いですが、シドニーやメルボルンでは、ヴィクトリアやタスマニアの涼しい地域のワインが人気ですね。なのに、日本では、いまだにオーストラリアと言えば、パワフルなワインという偏見があります。
W:かなりタイムラグがあるんでしょうね。
N:ピノ・ノワールで言うと、ニューワールドの中で、オーストラリアのピノ・ノワールは、一番美味しいと思います。グルナッシュもどきのような甘さがなく、しっかりとした骨組みがあります。僕は、カリフォルニアのピノ・ノワールは、すべてとは言いませんが、あまり好きではないです。甘過ぎるし、果実味がしつこいピノが多いですね。
オーストラリアは、日本より22倍くらいの広さがあり、涼しい場所、ピノ・ノワールにあう場所がたくさんあります。例えば、カーリー・フラットは、メルボルンから車で40分しか離れていないのに、オーストラリアの中でタスマニアの次に寒くて、冬には雪が降ります。
W:他に何か日本と世界の違いを感じる事はありますか?
N:日本では、カリフォルニアのプレミアムワインが売れますね。それは、面白いし、ビックリしました。アメリカ以外では、日本だけです。価格の高い、カベルネやピノ・ノワールは、他の国では、まったくと言っていいくらい売れません。日本人は、アメリカを、嫌らっていると同時に尊敬しているんですかね。これは、日本、独特の現象です。
あと、ワシントンのワインが流行っているのが面白い。別に、美味しくないとは言わないですが、これだけワシントンのワインが浸透しているのは、日本だけです。
先日、あるソムリエに、『一番好きなワインは何ですか?』と聞いたら『ワシントンのピノ・ノワール』と答えました。
F:あれ?ワシントンでピノ・ノワールって造っているの?
N:ほとんど造っていません(笑)。まあ、ピノ・ノワールは、ともかく、ソムリエが、ワシントンのワインが一番好きと答えた事にびっくりしました。普通、ソムリエが、そんなに確立されていない産地を一番好きとは、答えないですからね。それだけ、日本でワシントンのワインが認められているんでしょうね。
ニュー・ヨークやロスのレストランでも、ワシントンのワインは、リストにほとんど載っていませんが、日本では、載せているレストランが、かなりありますね。
W:最後に、どこか注目の産地はありますか?
N:アルゼンチンのワインがいいですね。隣のチリより、造り方が上手で、特にマルベックが、イギリスやアメリカで、高めなものを含め流行っています。個人的に、マルベックを家で飲んでいるわけではありませんが、国際的な意見としては、アルゼンチン・ワインの未来が明るいと思います。
W:今日は、お忙しいところありがとうございました。これからも面白いワインをご紹介ください。
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Ned Goodwin(ネッド・グッドウィン)氏
1969年4月にロンドンで生まれる。
オーストラリアで育ち、高校生の時には交換留学生として一年間日本で過ごす経験を持つ。
パリのオーストラリア大使館ではコンサルタントとして、ニューヨークでは多数のレストランで支配人やワインバイヤーとして従事。また2000-2002年にかけて、世界一優れたワインリストをもつマンハッタンのレストラン、Veritasのソムリエとなる。
現在、レストラングループ、グローバルダイニング㈱のワインディレクター、バイヤーとして勤務。またワイナート,ヴィノテーク、The Japan Times 、New York Timesを始め、執筆活動も行っている。
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藤巻 暁(ふじまき・あきら)氏
1966年生まれ。
日本ソムリエ認定 シニア・ソムリエ WSET(r) アドヴァンスト・サーティフィケイト ワインスクール「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。
美術大学在学中に美術の勉強で渡仏しワインと出会う。以降、1989年アカデミー・デュ・ヴァンの門をたたき、複数のワインバー、レストラン、ワインショップにおいてワインのサーヴィス・セレクトに従事した後、ワイン・オークションサイトを主宰。
現在、日本有数の品揃えを誇るワインショップ東急百貨店本店和洋酒売場THE WINEにて就業しながら、雑誌・メディアにおける執筆、酒販店のコンサルティング・講演等、ワインの普及販売に携わっている。
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【インタビュアー】 石井邦生(いしい・くにお)
叔父の酒屋を手伝ううちにワインに惹かれ、いつしか本気になってワインアドバイザーの資格を取得。調子に乗り、さらにワインショップやレストランで経験を積む。
このころにはワインの魅力にずっぽりはまり、この道で生きていくぞと決意。東急百貨店町田店ワイン売り場の専属スタッフを経てフリーになり、都内の百貨店にて販売に携わる。2006年には渋谷にワインバー『 Cabotte 』をオープン。 |
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