
K・・・川上大介氏
W・・・wine-navi インタビュアー 石井
【第1話】
W:昨年、オスピスのオークションに参加されたんですよね?御社の生産者にエルバージュを頼めるという面白い企画でしたね。そのあたりについてお話をうかがえますか?
K:まずは、オスピス・ド・ボーヌについて簡単に説明させてください。毎年、11月の第3土、日、月曜日に開催されるオークションは、1859年から今の形で行われています。
この歴史あるオークションが、2005年より、クリスティーズに任されることになって、品質が向上しました。
W:以前のオスピス・ド・ボーヌは、どのあたりが問題だったのでしょうか?
K:まずは、醸造ですね。毎年、11月の第3土曜日のテイスティングをするんですが、それに間に合わせるために、無理やりマロ醗酵を進めて、飲める状態にしていたんです。
それともう一つは、選果の問題です。最近のブルゴーニュは、悪い年があまりないですよね?70年代みたいに。温暖化の影響もあって、それほど悪い年はないんです。ただ温暖化になっていることもあり、ブルゴーニュといえども湿度が高いから、カビがたくさん発生していることが近年、特に問題になっています。そのためソーティングテーブル(選果台)を入れて、ブドウを丁寧に選り分けている人であれば、’07だろうと’08だろうと‘04だろうと美味いものは美味いじゃないですか。もちろん05や02は特にいいですよ。でも悪い年もいい造り手は、何の遜色がないくらいおいしいじゃないですか?それだけ、選果が重要になります。それなのにオスピスには、ソーティングテーブル(選果台)を1台も持っていなかったんです。
W:あれー。
K:よく糖度が高いとか日照が良かったとかをみなさん気にしますが、特に白ワインの場合、ポトンと少しでも濁ったものが混ざると、その全てのワインがダメになります。そのため造り手の視点からするとカビのほうが天敵になります。もちろん赤はタンニンが熟さないとダメですけどね。そういう意味では、ソーティングテーブルが無いっていうのは、困ったものです。
もう一つの問題は、全部に新樽、しかもよく分からないものを使っていたんです。
クリスティーズが入って最初に、ソーティングテーブルを入れて、カビの生えた腐ったブドウをいれるのはやめましょう!とやっただけで品質がグンと上がりました。去年くらいからは樽を誰に作らせるかとかまで細かく決め、ワインによっては新樽も使わないようになりました。
“無理なマロ発酵をしている”“腐ったブドウは入れている”“樽がひどい”という3点を改善したことにより、樽で買える段階では、かなりクオリティーが上がっています。その証拠に、以前はあまり良くない大手生産者しか買いに来なかったのに、シャルパン・パリゾやジャン・マルク・ルーロなどのネゴシアン・ポジションを持っている高名な生産者も買いに来るようになっています。
その次に、エルバージュの問題です。エルバージュって、温度一定の地下セラーに入れておけば、ルソーがやろうとデュガ・ピィがやろうと大手ネゴシアンがやろうと、それほど変わらないのです。寝かしておくだけの話ですから(笑)
熟成中のポイントの一つは、トッピング(補てん)を週一回程度ちゃんと満タンにするかが大切ですが、これはまじめなアルバイトを雇っておけば出来るわけで、エルバージュの腕って何なのよ?って話で(笑)、何の差もないんです。あえてあるとすると、地下セラーの温度で、例えばジュヴレ・シャンベルタンの地下水位が高いから浅めのセラーで温度が高いんです。だいたい通年18度くらい、地下深い人だったら通年14度くらいになり、多少、酸の残り方が変わりますが、そんなに差は出ないです。
結論を言いますと、エルバージュでの一番の問題は瓶詰めです。ノンフィルターにするのか、清澄をどうするか、ポンプをどういう圧力で使うか。商業的な大手ネゴシアンは、大きなボトリング・マシーンを使って、すごいスピードで瓶詰めしていくので、それだけワインにダメージを与えます。それと、品質がおかしいとか濁っているとか言われたくないので必要以上にフィルターをかけるし、インポーターがリーファーを使うかドライを使うか分からないから、酸化防止剤も多く入れることになります。
ということで、エルバージュ全般においては、瓶詰めに一番差が出るんです。
樽で試飲すると、意外とどこへ行っても、まあまあ飲めるんですよ。でもそのワインがボトリングされると『いったいどうなってるんだ?このワインは』ってことによくなります。だから、弊社の造り手(アラン・ビュルゲ、モンティーユなど)に任せられるのは、非常にいい事だと思います。
W:これは、実現したら面白いですね。
K:根源的には、オスピス・ド・ボーヌは、フィリップ・ル・ボン(フィリップ善良公)というブルゴーニュ公国の王様が、ニコラ・ロランに命じて始まったブルゴーニュの真髄なんです。
各時代における本当の金持ちの名士たちは、財産をあの世まで持ってゆけるわけでもないので、世の中に貢献しようと良い畑を寄進しますし、また逆に、「ろくでもない畑」を寄進したら名折れになります。寄進者の名前はキュヴェ名などで末代まで残るわけで、自分の名前を冠するに値するような畑を寄進してきています。
そんなわけで、各畑における一番いい区画を持っている場合が多いのです。
そもそもオスピスは慈善病院であり、恵まれない人や身寄りのないお年寄りを助けてあげるという、本当に素晴らしい活動なわけです。
これまで一部の心無いネゴシアンが、変な売り方をしたことにより、ろくでもないことになっていたケースが多かったのですが、オスピス本来の素晴らしいコンセプトに共感している良い生産者に1樽でもエルバージュしてもらうことにより、オスピスの品質が少しでも良くなることに協力出来ればと考えています。
第2話に続きます
次回は、2009年の出来やブルゴーニュのお薦め生産者についてうかがっていきたいと思います。
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川上大介(かわかみ・だいすけ)氏
(株)ヴァンパッシオン 代表取締役
1968年11月18日生 さそり座 A型 ワイン業界歴16年
(社)日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー
2000年から3年間フランスでクルティエ修行 学生時代はワインと全く無縁のラグビー選手
シャンパーニュ&ブルゴーニュ命♪
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【インタビュアー】 石井邦生(いしい・くにお)
叔父の酒屋を手伝ううちにワインに惹かれ、いつしか本気になってワインアドバイザーの資格を取得。調子に乗り、さらにワインショップやレストランで経験を積む。
このころにはワインの魅力にずっぽりはまり、この道で生きていくぞと決意。東急百貨店町田店ワイン売り場の専属スタッフを経てフリーになり、都内の百貨店にて販売に携わる。2006年には渋谷にワインバー『 Cabotte 』をオープン。 |
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